シカゴに滞在していて気になったのは、教育の問題…でも、「感想は?」と聞かれたら、余りにも混沌としすぎて、何とも答えようがない。マイノリティや移民の家庭の子も多い、City Collegeの生徒に混じっていると身近な問題に思えた。とくに低所得層の居住地域や、その地域の公立校等では…ティーネージャーの多くがギャングにとりこまれたり、グループ同士の勢力争いが余りにも日常的─ カレッジの1年生が多い英語のクラスでも、エッセイの内容を考える「とっかかり」として、「bad neighborhoodの問題を、どうしたら良いのか」とかいう討論があったのだが、犯罪や暴力の多い劣悪な地域、警官がもの凄く柄の悪いウェストサイド…などに住むクラスの子らの訴えを聞いて暗澹たる気持になった(20人余りのクラスでも本当に「悪い地域」に住んでいる、というのは2人ほどだったけれど…)
グラフィックアートのクラスで一緒で…Photoshop CS5の操作が速くて器用で…いつも感嘆させられたblack girlのアシュリー…は特に「悪い地域」に住んでいるというのだ。 クラスの討論での発言によると、彼女は真面目に大学に通っているのに、近所の街角で出会う警官が、荒んだ質問をしてくる、「どこへ行く?何人子供がいる?…」などと…その街では、一人ひとりがどんなに努力しても、周囲のネガティブな環境が、それを阻んだり、周囲から押しつぶそうとするのだろうか?
シカゴのエリアには3ケ所ほどの深刻な“Food Desert”もある…それは半径1.5マイルほどの地域に生鮮食料品(Produce)を売るグローサリーやスーパーが一軒もなく、地域の住民が日常、必要な新鮮な野菜や肉や果物を入手できない、という、いわゆる食料砂漠だ(2,3マイル離れた場所の店にアクセスできるバスなどの交通手段も皆無なのだ、とか…) これは、Far South Side やWest Sideの昔から黒人層の多い地域などに多いようだ…最近、シカゴ中の大学でも問題視されて、リサーチだけは盛んだ。(自分のクラスだけでも期末ペーパーでこれを扱っっていた学生は3人以上)「それはアフリカ系の住民が、生鮮食料品というものを食べないからだ」とアフリカ系ではないリサーチャーが大胆にも暴言を吐いた(Someone had audacity to say...)とか…社会学のアフリカ系のティーチャー、エイリーンは憤慨していた。彼女自身も1,2年前にこの件でフィールドリサーチをしたそうだ。「そこにはなぜ…他の地域によくあるようなメキシカンやアラブ人の経営する小さなスーパーすらもないの?」 などと聞くと、「いい質問だ、銀行がその街のアフリカン中心の住民層にビジネスを始める資金融資をしないのだ」と彼女は答えた。銀行はクレジットヒストリー等も厳しく問う可能性もある─長年行政が人種別の居住地隔離政策を進めてきたこの都市での、歴史的な差別経済racial economyの結果なのだ
CTAの市営電車もまだFar South Sideまでは通ってはいない(最南端は95th St. Dan Ryanだ)膨大なシカゴの南郊地域の人口のダウンタウンへのアクセスすら殆どないとか(2016年オリンピック開催が決まっていれば、新たなCTAのラインを作る計画もされていたが、オリンピックへの夢と共にそれも潰えた…*注:市長選に出たエマニュエルはCTAレッドラインの南への新たな延長計画を提案したが)
55thから59thSt?の 近辺のUniversity of Chicago周辺のハイドパークエリアでも、(ハイドパーク自体は静かで美しい学生の街だが)道路ひとつ隔てて低所得のアフリカン・アメリカン層の地域と隣り合っているので暗くなると暴力的な犯罪が起こる事があり、警戒されている。ハイドパークよりも南には行ったことがないけれど…そこからFar South Sideに行くまでの途中が特に治安が悪い地域で、最南部に住む住民はダウンタウンと行き来するにはギャングや犯罪の地域を通らねばならないのも難点だとか。その地域には、かつてはシカゴの住宅政策の失政の象徴として悪名高かったRobert Taylor Home(公共住宅の高層ビル)もあった。(郵便局も配達を拒むようなギャングの根城だった。その潜入ルポを書いたシカゴ大のスディール・ヴァンカテッシュの著書「Gang leader for a day(邦題:ヤバイ社会学)」は最近、日本語訳も出されている…今ではこうした公共住宅は皆取り壊されて、行政が低所得層のなかにわざと中間層を誘致する混合所得地域に、生まれ変わりつつある…少なくとも名目上は)
Fenger High School事件の公判
パブリックスクールをはじめとした教育の改善の問題はメディアでも頻繁に論議される…先日ハイドパークで大きなコンファレンスもあったものの聞きに行けなかった(1月からの春学期を前に各校が新入生をいざなう電車広告も溢れている)このところ耳目を引いたのは、2009年9月に111Stで起きた、Fenger High Schoolの生徒と近所の公共住宅に住むティーンエージャーグループとの抗争でDerrion Albertが殺された事件…の1年後の公判があったというニュースだ。Derrion をツーバイフォーの木材で殴った15歳の生徒をはじめ、3人のFengerのティーンネージャーが有罪判決を受けたとか。
対立する高校生グループ同士のStreet fightが暴走し16歳のDerrion Albertが暴力で殺された怖いビデオは日本にいた際に偶然ネットで目にした…その時は、このような怖いティーンネージャー抗争のビデオが米国ではよくある事か、まれなのか…の位置づけが全く判らなかった (写真は被害者 honors studentだったDerrion Albert ) でもシカゴに暫く居る間にそれも判明した…そのビデオは、2009年にメディアにウィルスのようにネットに拡大し(the video went viral)全米を震撼させていた。そしてシカゴのYouth Violenceの問題を改めて全米に印象づけた、とメディアはサマライズしていた(暴力と殺害の現場を捉えたビデオはさすがに稀で社会に大きな影響を与えたのだろうか。2007年頃にもニューヨークのUnion Sq.で同じようなハイスクール間の抗争があり、黒人生徒が殺される事件があったが、現場のビデオなどなかったためかメディアでも話題にすらなっていなかった。それは、”よくあること”のように終わっていた)
Fenger Highschool事件の1年後の公判の記事 http://www.chicagotribune.com/news/local/ct-met-fenger-beating-trial-1209-20101208,0,2026914.story Fenger student, 15, guilty of murder in death of classmate Teen Derrion Albert Attacked, Beaten to Death in Melee(Derrionの殺害時の恐ろしいビデオ) http://www.myfoxchicago.com/dpp/news/metro/video_derrion_alberVideo: Derrionの母親のインタビュー http://www.myfoxchicago.com/dpp/news/metro/derrion_albert_momMom of Teen Who Was Beaten to Death Speaks Out
事件で有名になった後に学校の様相ががらりと変化したという記事…http://www.chicagotribune.com/news/local/chi-fenger-safe-passage-06-oct06,0,2119252.story
Teen goes on trial for fatal beating at Fenger High- With stricter discipline, school is now calmer その後、SouthSideの教育刷新への新たなハイスクールの計画の記事が出たが、折角新設校をグレードアップしても、地域の新旧の学生同士には更なる対立が予想される、との記事(今回のような暴力沙汰、殺人事件まで予想されるというのだろうか?) http://www.chicagotribune.com/news/local/chicago/ct-x-c-south-shore-high-school-20110105,0,4120683.story New South Shore high school creates community rift
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